数週間前、アメリカ留学時代のクラスメイトが8年ぶりに来日しました。
彼女は宮崎県出身の才媛で、フルブライト奨学生として高校生の時に一年間イギリスに留学。その後東京の大学を卒業後30歳で単身イスラエルに留学、そこで知り合った地質学者と結婚。以来エルサレム在住40年の人物です。
わたしとたまたまクラスメイトになったのは、ご主人が米国駐在となり、学生兼主婦であった彼女はやむなく修士課程のプログラムをアメリカの大学で習得することになったからです。結果、偶然わたしと同じ大学で同じクラスになり、うれしい出会いとなりました。
当時のわたしは、試験前はいつも肩で息をする状態。対する彼女は学業と主婦業
(なんと妊娠中)を見事に両立させ、試験前も「準備バッチリ」と余裕しゃくしゃく、結果はいつもクラスで1、2番でした。
わたしにとって外国とは=アメリカただひとつ。しかし、彼女は日本からイスラエルに留学し、そこで結婚をし、その上で、アメリカへ勉強に来ているわけですから、異文化に対する理解の「深さ」がまったく違っていました。
コトバ×異文化を学ぶ専門教科「言語学」への適性力が天と地です。(誰ですか?
IQが天と地というのは、コラー!!)
とにかく彼女は、当時すでに、英語、ドイツ語、ヘブライ語を話していました。
もちろん日本語(宮崎弁、熊本弁含む)は当然です。
さて、今回の来日、懐かしの里帰りではありません。彼女の三男坊B君(28歳)が日本の企業に就職したので、そのためのアパート探しです。
賢い彼女のことですから、日本の複雑な住宅事情、怪奇な契約条項を並びたて、これは母親のヘルプが絶対に必要であると、ご主人及び周囲を納得させ、長期来日を実現した(笑)のだと思います。
と、いう訳で、アパートの契約も無事に終わり、休日の1日、親子でわが家を訪れてくれました。
その日は、近くにある鹿嶋神社(大井町)の大祭にあたりますので、地元の会長さんのサポートを得て、B君に法被(ハッピ)を着て神輿(ミコシ)を担いでもらうことにしました。

まずは集合駅大井町駅から神社に直行。二礼二拍一礼の祈りを捧げた後、集会所に直行、法被を着て、神輿を担ぎ、小一時間周辺を練り歩きしました。
その後、わが家でお粗末大量「手巻き寿し」です。
B君曰く「楽しかった。良い経験ができました。Thank you!」
わたしが、「やったー」と、うれしく喝采したのは、SNSでメール&写真を受けっとったご家族全員が「口あんぐり」「目ぱちくり」状態という報告を受けた時です。
次に、彼B君のご紹介を少々。
彼は28歳独身。今年の10月から日本の会社で働いています。
彼が現時点で話せる言葉は、ヘブライ語、日本語、英語、スペイン語の4か国語。
彼は、幼少のころから母親とは日本語で話していたそうです。故に日本語の基本は母親から習った日本語だけ。これは5人兄妹みな同じ。
わたしとはじめて会ったのは、ほんのひと月前。彼の流暢な日本語にびっくりしました。いわゆる外国人が話す日本語の妙はアクセントやクセがまったくないのです。
そのことを母親に告げると、話すことはともかく、「読む、書く」はこれから、
「道遠しです」と厳しい評価でした。
英語はどうやってマスターしたの?という質問には、父親のアメリカ転勤の1年間が非常なアドバンテージになったと答えました。イスラエルの日常生活はすべて世界共通語の英語に紐づけられているから、1年間現地の小学校でアメリカ人と一緒に勉強すれば英語力は自然に身につくといっています。
スペイン語は?という質問には、話せると公言してよいレベルかどうか?と少し恥ずかしそうな笑顔。
話を聞くと、スペイン語は、兵役を終えた後6か月間南米を一人旅して身につけたといいます。ご存じのようにイスラエルには徴兵制度があります。男性は18歳から2年8か月間、女性は2年間です。つまり彼はこの義務を終えたあと、南米へ一人旅に出たそうです。南米の大半の国の公用語はスペイン語です。
(注:ブラジルはポルトガル語)。
それにしても、わずか6か月ですよ。これで、日常生活に必要なコミュニケーションができるようになる。驚きですネ。
B君のコトバ・マスターの経緯を知ると、それが勉強、テスト、正解〇&不正解✕で成り立っているではないことがよくわかります。
彼は海外に一定期間滞在し、現地の人々と交流を図りながらその国の文化や生活習慣を学ぶことが面白くてたまらないといいます。そのためのコミュニケーションの道具としてコトバを身につけるは「勉強」ではないのです。
「コトバは使えば覚える、使わないと忘れる」といわれています。スペイン語は最近あまり使わないので、忘れかけている、というのが先の「笑い」の意味です。
つい最近まで、平均的日本人は「中高6年間+大学2~4年間」英語を学び、それでもほとんどが聞き取れない話せない状態でした。これはダメだというので、2020年から小学3年から英語授業が必須化されました。その成果を実感するにはもう少し時間が必要だと思いますが、現場に首を突っ込んでいるわたしは、ただ今、大いに焦っています。世界英語能力指数ランキングで過去最低の92位を記録したというニュースを知ったからです。これは英語を母語としない世界116か国の成人を対象にした調査で、正式名「EF EPI英語能力指数2024年度」による結果報告です。
結局は、文法を基礎とした読解力育成が中心で、行きつくところは英検の取得がゴール。テストにリスニングを導入するだけで手一杯という現状を知る者としてやりきれない思いです。
B君と接することで、わたしはコミュニケーション・スキルの偉大さを再確認しました。
彼の新しいものをどんどん吸収していきたいという気概を感じたので、法被を着て神輿を担ぐというアイデアを思いつきました。そのココロは、お母さんの国、日本の面白さや伝統の奥行きを感じ取ってもらいたいという想いです。加えてキミには誇り高き日本の血が半分流れているのを忘れないでね、という願いでもあります。
B君は、きれいな日本語(この場の共通語)で、その興奮、喜びを周囲の人に伝えてくれました。
「ELFえいごの寺子屋」は、世界の共通語(この場合は米語)を使って、世界中の人たちとコミュニケーションを図り、その国の文化・伝統・価値観を学び、競い合うことができる人材づくりの「最初の一歩」になりたい、と思っています。
